そもそもなぜ気密性能が重要なのか
日本在来の昔の住宅は高温多湿な夏を旨とした開放的な構造が多く、そのような気密性能の低い家では冬場、居住区間内の温度差が大きく、多くの隙間から冷気が侵入し足元が冷えて、不健康で不快な居住環境になってしまいます。断熱性能と同時に気密性を高めることによって、熱が逃げるのを防ぎ、快適な温熱環境を実現できるだけでなく、壁内結露による住宅の耐久性への悪影響も防止することができます。気密性能の高さはC値(相当隙間面積)で表現され、これは総相当隙間面積を住宅の仮想延べ床面積(建物の延べ床面積とは違うもの)で除した値となります。特に寒冷地では冬期の室内外温度差が温暖地よりも大きくなるため、より高い気密性が求められます。
セルロースファイバーで気密を確保することはできる?
結論から申し上げると、セルロースファイバーで高気密高断熱住宅は可能ですが、セルロースファイバー自体には気密層としての役割がないため、気密性を高めるためには別途のの気密対策が必要となります。(セルロースファイバーの施工写真で見えるシートは気密シートではなく不織布)専門的な話となりますが、セルロースファイバー断熱の家で気密層を確保する場合には2つのパターンがあります。
①外壁面材の部分を気密層として確保する。
外壁面材で気密を取ることが出来ます。その場合、外壁面材のジョイント部分に対しても気密テープなどで気密化処理をします。必要な労力や手間はこちらの方が少ないです。
②防湿層を設置する場合にはこれに気密層の役割をもたせる。
防湿層とは冬期、室内側の水蒸気が侵入して壁内結露が発生するのを防ぐために設けるもので、セルロースファイバー断熱の家で設置するか否かは外壁面材の種類と住んでいる地域の組み合わせを元に結露計算を行い判断します。(セルロースファイバーは条件が整えば防湿層を省略することが可能です。)気密シートとして一般的なのはポリエチレンフィルムなどですが、最近では夏場の逆転結露を防ぐために開発された可変透湿気密シートを使われることも増えてきています。
住宅の気密性能をあげるためには?
その他にも気密性能を上げるためには様々な工夫が必要となります。以下にその例を一部挙げます。
窓やドアなどの開口部の性能向上
開口部の気密性能は重要な要素です。窓やドアの等級グレードを上げたり、気密の取りにくい引き違い窓の数を少なく調整することで家全体の気密性を上げることが出来ます。
配管や配線などの気密層を貫通する部分の気密処理
気密層(気密シートなど)を貫通する部分はシーリング材や他気密化補助部材を使用することで気密性を確保できます。
床断熱のUB下の人通口の気密処理
UB下の人通口は塞いでおかないとそのまま床下を通じて外気につながってしまうため、基本的に断熱気密処理が必要です。
床断熱あるいは天井断熱での間柱の気流止め処理
日本の在来の木造軸組工法は、気流止めをしないと床下か天井裏で外気とつながり、それがコンセントボックスやスイッチ、配電盤の隙間などから空気がもれてしまいます。
中間気密測定の実施(断熱気密層が出来たタイミング)
中間気密測定を実施することにより、どこに隙間があるかを特定することが出来、気密性を改善する処理を行うことが出来ます。
まとめ
住宅の気密性能をあげるには、様々なことに意識を向けなければならずかなり地道な作業と努力を伴うものです。また、高気密住宅の実績のある工務店や設計事務所は定期的に社内で中間気密測定を実施している傾向が高いです。これは中間気密測定を実施することで隙間ができる傾向を把握しやすく、それに対して対処・改善を積み重ねることができるからでしょう。これからお家を建てる方で、高気密高断熱の住宅を目指すのであればそういった経験やノウハウもったところにお願いするのが重要となります。